Part 2 の はじめに
2011/01/25
「マイクの友だちと家族」「タケシの留学」それぞれの Part 2 「はじめに」のセクションに掲載したものと同じものを以下に掲載させていただきました。
英語表現を学ぶときには、その表現が使われる状況をふまえて学ぶことが大切です。なぜなら、どういう状況で誰と話すかによって、使う英語表現は異なるからです。たとえば “What’s your name?” は、取り調べの際に警察官などが使う表現で、威圧的な感じがします。初対面の人に、そういう威圧的な表現を使ったとしたら、どうでしょうか? なんだか怖い人だと思われるかもしれないし、あるいは失礼な人だと思われるかもしれません。初対面の人にはこちらから自己紹介をすれば、相手も同じように自己紹介をしてくれるはずです。自分は名乗りもしないのに「名前は何?」と、いきなり威圧的に相手の名前を尋ねるのは失礼です。言葉はマナーに則って使うべきもので、言葉を学ぶなら、そうしたマナーとともに学ぶべきです。
日本人は日本語を学んでいる外国人に「日本語は難しいでしょう。特に敬語はね」とよく言います。確かに、敬語は日本社会の人間関係を如実に映し出す言葉で、それを知らずして日本社会の人間関係を理解することは難しいでしょう。では、日本語以外の言語は人間関係を無視して話されているのでしょうか? そんなことは、ありません。どんな言語でも、人間同士がコミュニケーションをとるのに使う言葉には話者の人間関係が反映されているはずです。
英語を話している人たちは、自分より年上か、年下かということを日本人ほど意識しないで話すので、敬語にあたる言葉はありませんが、親しい人に話すときとそうでない人に話すときでは、明らかに言葉遣いが違います。親が命令口調で子どもを躾けることは多いかもしれませんが、友だちに対して常に命令口調では嫌われてしまいます。親しい友だちとは、気を使わずに率直に話すのが普通です。でも、たとえ友だち同士であっても、何かお願いするときは気を遣って少し丁寧な言葉になることもあります。どういう状況で誰と話すかによって、使う英語表現は異なるのです。したがって、英語表現を学ぶときは、その状況や人間関係を把握したうえで、その場にふさわしい英語表現を学ぶ方が、よりよいコミュニケーション術を身につけることができます。
また、状況をふまえて学ぶと、同じような状況になったときに、学んだ英語表現が口から自然に出くる確率が高くなります。これは、スポーツ選手が試合の流れをイメージしてトレーニングすると、実際の試合のときに実力を発揮できるのに似ているかもしれません。あるいは、役者の舞台稽古のようなものかもしれません。セリフを暗記しただけで、いきなり舞台に立ってすばらしい演技のできる役者はいません。それと同じように、英語表現を暗記しただけでは、それらの表現を実際の場でうまく使えないのではないでしょうか。
ですから、読者の皆さんも登場人物の置かれた立場や気持ちを理解し、会話の状況をよくイメージしながら、英語を練習してください。タケシや他の登場人物になったつもりで声に出して言ってみてください。イメージトレーニングが十分にできていれば、話すときの不安やプレッシャーも、きっと和らぐはずです。ぜひ試してみてください!
2011年1月 著者